F1をはじめ、世界のトップカテゴリーで多くのユーザーが使用するドイツのヘルメットブランド「SCHUBERTH(シューベルト)」。近年は日本国内でも取り扱いが広がり、カートからツーリングカーまで着用するドライバーが増えるなど、注目度が高まっている。その一方で、「海外製は日本人の頭に合いにくいのでは」「モデルの違いが分からない」と感じているドライバーも少なくないだろう。今回、SCHUBERTHの国内取扱店のひとつであるStarFive(スターファイブ)の店長・高崎保浩氏に、モデルごとの違いや独自のフィッティング、ベンチレーション、HANSデバイスとの親和性について聞いた。高崎氏が繰り返したのは、「高いモデルが誰にとっても一番いいわけではない」ということ。競技と身体に合ったヘルメットを選ぶために知っておきたいポイントを筆者の試着体験とともに紹介する。

F1からジュニアカートドライバーまで幅広いラインナップを用意
SCHUBERTHの四輪用ラインアップには、 F1をはじめとする世界最高峰カテゴリー向けモデル(FIA 8860-2018規格)、一般四輪レース・ラリー向けの現行プレミアム規格(FIA 8859-2024規格)、レーシングカート専用規格 FIA 8878-2024 SNELL K2025、そして15歳未満のジュニアカートドライバーを対象とした規格(SNELL FIA CMR2016)と幅広いモデルがラインナップされている。ここで注意したいのが、規格名に含まれる数字だ。「2018」と「2024」だけを見ると、8859-2024の方が新しく、上位の規格に思えるかもしれない。しかし高崎氏によれば、両者は単純な新旧関係ではなく、求められる安全性能のレベルや使用を想定するカテゴリーが異なるという。
「8860と8859は、安全性能のグレードが違うと考えてもらうと分かりやすいです。数字の後ろの年は、基本的にはその規格が制定された年。2024の方が新しいから、2018より上ということではありません」
FIA 8860-2018は、F1をはじめ、ハイパーカーやスーパーGT、海外の上位カテゴリーなど、より高いレベルの保護性能が求められる競技を想定した規格。一方のFIA 8859-2024は、スーパー耐久、GR86/BRZ Cup、KYOJO CUPなど、国内の多くのカテゴリーで使用できる規格として位置づけられる。高崎氏は取材の中で、8859-2024規格のモデルについて、「スーパーGTではFIA 8859-2024規格は使用できないため、8860-2018規格のモデルが必要になります。一方、スーパー耐久や86レース、KYOJO CUPなどでは8859-2024が選択肢になる。海外レースやマカオなどになると、また求められる規格が変わってきます」と説明した。
つまり、同じSCHUBERTHのカーボンモデルであっても、すべてのレースへ出場できるわけではない。購入前には、現在参戦しているカテゴリーだけでなく、今後予定しているレースの車両規則や競技規則まで確認する必要がある。なお、使用可能な規格はカテゴリーや開催年によって変更される場合があるため、実際の参戦時には各大会の最新規則を確認してほしい。
画面右からSF4 ABP、SF4、SP1 CARBON EVO、SP1 HYBRID
フェリペ・マッサ選手の事故から加速したABPの安全対策
ラインアップの頂点に位置するのは、SF4 ABPだ。ABPとはAdvanced Ballistic Protectionの略で、飛来物やデブリの直撃から頭部を守るため、バイザー開口部周辺の強度を高めたプロスペックモデルでF1やハイパーカーをはじめとする最高峰カテゴリーを想定している。現役F1ドライバーでは、マックス・フェルスタッペン選手や角田裕毅選手らが使用している。

ABPの考え方を語る上で欠かせないのが、2009年のF1ハンガリーGPで発生したフェリペ・マッサ選手の事故である。予選走行中、前方を走っていたルーベンス・バリチェロ選手の車両から外れたサスペンションスプリングが、マッサ選手のヘルメットのバイザー上部付近を直撃。ヘルメットの額部分とバイザー部分に大きくな損傷を受け、マッサ選手はその衝撃で意識を失い、タイヤバリアへ高速で衝突。左目上部の負傷や頭蓋骨骨折などの重傷を負い、残りのシーズンを欠場した。
この事故を契機として、F1ヘルメットの開口部周辺に対する安全対策はさらに加速した。当初はバイザー上部へ高強度素材のストリップを追加して補強する方法が採用されたが、その後は開口部そのものを従来より約10mm小さくし、バイザーも小型化。飛来物が侵入する可能性のある範囲を狭めながら、開口部周辺の強度を高める現在のABP仕様へと発展している。
「ヘルメットで唯一弱くなりやすいのが開口部です。ABPは軽さを追求したものというより、目の周りや顔の保護により着目し、危険性の高い部分の強度を高めたものです。開口部が狭く、バイザーの厚みや形状も通常モデルとは違います」
一方で、高崎氏はABPが万人向けではないことも強調する。
「顔、特に目の周辺をより強く守るためのモデルです。ただし、開口部が狭い分、カテゴリーによっては視界の狭さがデメリットになることもあります。フォーミュラカーでは気になりにくくても、周囲を見る機会の多いツーリングカーでは、広い視界の方が使いやすい場合もある。高いから一番いいということではなく、自分が走るステージに合ったものを選ぶことが大切です」
F1の現場で磨かれる空力性能
SF4 ABPは、安全性だけでなく空力面にもF1の現場で得た知見が投入されている。高崎氏によれば、F1チームのレッドブル・レーシングではSCHUBERTHのヘルメットを風洞へ持ち込み、マシンの空気の流れに合わせた専用のエアロパーツを開発。レッドブルのドライバーが使用するヘルメットには、ほかのチームとは異なる形状のウイングやスポイラーが装着される場合もあるという。
「レッドブル・レーシングをはじめとするF1チームでは、ウイングやスポイラーを装着したヘルメットを風洞施設へ持ち込み、空力開発を行うことがあります。サーキットや気象条件に応じて、形状の違うパーツが用意されています。フォーミュラカーはドライバーの頭が外に出ているので、ヘルメットの周囲で風を巻かないようにすることが大切です。ドライバーの身長や着座位置によっても、取り付ける位置は変わってくると思います」
シンプルに見える帽体の周囲には、チームごとの車体形状や空気の流れに合わせた工夫が盛り込まれている。市販モデルの背景に、F1チームと積み重ねてきた開発が存在することも、SCHUBERTHを特徴づける要素のひとつだ。
画像提供 StarFive

カートから四輪へのステップアップも見据えられる
SCHUBERTHの中でも、幅広いドライバーにとって現実的な選択肢となるのが「SP1 CARBON EVO」と「SP1 HYBRID」だ。SP1 CARBON EVOがカーボンシェルを採用する一方、SP1 HYBRIDはカーボンとグラスファイバー系素材を組み合わせ、軽さと強度、価格のバランスを図っている。
「僕がベストバリューだと思っているのはSP1 HYBRIDです。シェルが薄く、実際にかぶっても軽さを感じられます。四輪用のFIA 8859-2024およびSNELL SA2025、レーシングカート用のFIA 8878-2024およびSNELL K2025に適合しているため、カートと四輪の両方で使用できる。それでいて価格は20万円を切るので、SCHUBERTHの中では比較的手が届きやすいモデルです」
カートで使い始め、その後に四輪へステップアップする場合も、同じヘルメットを使い続けられる。ヘルメット本体に加えてペイントにも費用がかかるだけに、将来の四輪参戦を見据える若いドライバーにとって、そのメリットは大きい。
「ペイントする場合は外観から素材の違いが分かりにくくなるので、価格とのバランスを考えるならSP1 HYBRIDは魅力的です。一方、カーボンの質感をそのまま生かして使いたい方には、SP1 CARBON EVOという選択肢があります」
モデル名や価格だけで優劣を決めるのではなく、参戦カテゴリーに必要な公認規格、今後のステップアップ、使用環境、ペイントの有無まで考えて選ぶ。それが高崎氏の考える“正しいヘルメット選び”だ。
一方、カート専用モデルには、若年ドライバー向けの軽量規格であるSNELL CMRに適合したモデルのSK1 HYBRIDもある。CMR規格では、成長段階にある子どもの首への負担を抑えるため、バイザーを含む重量に上限が設けられている。高崎氏は、「15歳未満のドライバーは、国内ではCMR規格のヘルメット着用が原則義務付けられています。その一方、サイズが合えば大人が使っても問題は、ありません。僕自身もCMRモデルを使っています。軽いので、首に不安のあるジェントルマンドライバーにも選択肢になります。『子ども用だから』と決めつけず、自分の用途とサイズに合うかで考えてほしいですね」
画像左からSK1 HYBRID、SP1 HYBRID、SP1 CARBON EVO(画像提供 StarFive)
“海外製は日本人に合わない”という先入観を覆すフィッティング
今回の取材で最も多くの時間を割いたのが、SCHUBERTH独自のフィッティングだった。海外製ヘルメットに対して、「横幅が狭く、日本人の頭には合いにくい」という印象を持つ人もいる。しかし高崎氏は、サイズ表だけを見て判断すること自体が間違いだと話す。
「まず頬パッドを外した状態でかぶり、頭蓋骨に合うシェルサイズを決めます。そこでミディアムシェルかラージシェルかを判断する。その後に頬パッドの厚さを選び、最後にトップパッドで目の高さを合わせていきます」
頬がきついからと、すぐに大きなサイズを選ぶのではない。先に頭囲とシェルの相性を確認し、頬や頭頂部のパッドを組み替えて顔全体へ合わせていく。いわば既製品でありながら、セミオーダーに近いフィッティングが可能になる。
「シェルが合っていないものを、パッドだけで何とかすることはできません。逆に、頭蓋骨にシェルが合っていれば、頬の厚みや目の位置は細かく調整できます。靴で中敷きを変えるような感覚です。オーダーメイドでなくても、自分の顔の形を理解し、それに合わせてあげればいいんです」
実際に取材スタッフが試着すると、普段使用している他社製ヘルメットより小さな表記のシェルが適合。頬パッドを組み替えることで、無理な圧迫感を抑えながら、頭全体が包み込まれるようなフィット感を得られた。
高崎氏は、他メーカーで使っているサイズをそのままSCHUBERTHへ当てはめることには注意が必要だという。
「『今使っているヘルメットがLだから、SCHUBERTHもLですか』という質問には答えられません。メーカーが違えば靴のサイズ感が違うのと同じです。ヘルメットは厚いソックスでごまかすようなこともできません。まず、かぶって確かめることが必要です」

顔に近いアイポートが生む、広い視界
SCHUBERTHは、単純にバイザー開口部を大きくするのではなく、顔とアイポートの距離を近づけることで視界を確保しているという。
「顔と開口部の距離が短いので、縁のゴムが視界に入りにくい。タコメーターやサイドミラーを見た時にも、開口部を必要以上に広げず、広い視界を得られる設計です」
フィッティング時には、鼻の先端とアイポートの位置関係も確認する。目の高さが適切に決まることで、視界だけでなく、ヘルメット内部のエアフローも本来の性能を発揮する。

ARAI GPV-RとSP1 HYBRIDを比較したサイドビュー
風を“入れる”だけでなく、流して抜くベンチレーション機構
ベンチレーションもSCHUBERTHを象徴する機能のひとつだ。顎部から取り込んだ空気は、口元へ送るだけでなく、バイザー内側へ流して曇りを抑えることができる。取材ではブロワーを使い、実際に空気の流れを体験した。風が直接目へ当たるのではなく、バイザー内側に沿って流れ、後方へ抜けていく感覚がはっきりと伝わる。
「ただ穴から風を入れるのではなく、空気を整流して上へ送り、後ろから抜いていきます。目に直接当たりにくいので、コンタクトレンズを使うドライバーにもメリットがあります。バイザーの曇りを抑えながら、ヘルメット内部の温度も下げられる仕組みです」


強度と操作性を追求したバイザー周辺の設計
SCHUBERTHの特徴は、シェルや内装だけではない。高崎氏が細部まで解説してくれたのが、バイザーの形状とロック機構だ。まず目を引くのが、バイザーの上下に設けられた段差である。一見するとデザイン上のアクセントにも見えるが、これはバイザー自体の剛性を高めるためのリブ形状だ。
「上側だけではなく、下側にもリブが入っています。バイザーを平らに作るのではなく、段を設けることで強度を上げている。金型にも手間がかかりますし、段差があるのでバイザーステッカーは少し貼りにくくなりますが、基本にあるのはやっぱり安全性です」
高崎氏によれば、SF4 ABP用のバイザーは通常モデルと厚みや寸法も異なる。ABPではアイポートを狭くし、開口部周辺を強化すると同時に、小型かつ厚みのある専用バイザーを組み合わせることで、飛来物に対する保護性能を高めている。一方、通常仕様のSF4やSP1、カート用モデルの一部では、共通するバイザーを使用できる。カテゴリーに合わせて異なる安全規格を満たしながら、交換部品の共通性も考えられているという。

左右どちらの手でも操作しやすいセンターロック機構
バイザー中央部に配置されたセンターロック機構も、SCHUBERTHを象徴する装備のひとつだ。ロックをバイザーの中央に置くことで、右手でも左手でも位置を探しやすく、レーシンググローブを着けたままでも素早く操作できる。
「右側、左側のどちらかに小さなロックがあると、グローブを着けた状態では操作しにくいことがあります。センターなら目で確認しなくても場所が分かりやすく、左右どちらの手でも触れる。ちょっとしたことですが、走行中の使いやすさは大きく変わります」
高崎氏が実演したのは、中央のレバーでロックを解除し、そのままバイザーを押し上げる一連の操作だった。構造を理解すれば、力任せに扱う必要はない。視界が限られる状況や、クラッシュ後に落ち着いて操作しなければならない場面でも、直感的に扱えることを意識した設計だ。

ただし、高崎氏はセンターロックにも使用環境によってデメリットがあると説明する。ツーリングカーでは、車内の温度や曇りの状況によってバイザーを開けたまま走るドライバーも多い。その際、中央のロック部分が視界に入り、メーターやルームミラーを見る時に気になる場合があるという。
そこでSCHUBERTHでは、センターロックのないツーリングカー向けのロックレスバイザーも用意。ヘルメット側に残るロックの受け部分には専用カバーを装着でき、従来型のバイザーに近い感覚で使用できる。
「センターロックがすべての人に必要なわけではありません。フォーミュラカーのようにバイザーを閉じて走るなら操作しやすいですが、ツーリングカーで開けて走ることが多い人には、ロックレスの方が視界を邪魔しにくい。ここでも、使うカテゴリーに合わせて選ぶことが大切です」
画像提供 StarFive
曇り止めはバイザーごと交換しない
SCHUBERTHの各モデルには、ピンロック式のアンチフォグレンズが標準装備されている。バイザー内側へレンズを固定する構造で、ダブルレンズのように空気の層を作り、曇りを抑える仕組みだ。アンチフォグ性能が低下した場合は、バイザー全体ではなく内側のレンズだけを取り外して交換できる。消耗する曇り止め部分のみを交換できるため、長期間使用する上でのメンテナンス性にも優れている。
「最近曇りやすくなったと感じたら、バイザーごと買い替えるのではなく、内側のアンチフォグレンズだけを交換できます。着脱も難しくありません。雨天時に上から水が入りにくい形状になっていることも含めて、実際のレースで使い続けることが考えられています」
ハイコントラストバイザーが見せる“裸眼とは違う世界”
高崎氏がもうひとつ注目してほしいと語ったのが、SCHUBERTHのハイコントラストバイザーだ。単に光量を抑えるスモークバイザーとは異なり、色の見え方を補正する特殊なコーティングによって、物体の輪郭や路面の陰影を捉えやすくするという。
「初めて見ると濃いバイザーに感じるかもしれませんが、暗くして見やすくしているだけではありません。実際に見ると、物の輪郭がくっきりして、視力が上がったように感じる人もいると思います」
取材後に屋外で試すと、木々の陰影や濡れた路面の凹凸が裸眼より明確に感じられた。ベースとなるバイザーには濃淡の選択肢があるため、天候やドライバーの好みに合わせて選べるという。

画像提供 StarFive
HANSデバイスとの親和性まで含めた設計
現代の四輪レースでは、ヘルメット単体だけでなく、HANSデバイスを含む安全装備全体の組み合わせが重要になる。
SCHUBERTHは後頭部のシェル形状や内装の張り出しを工夫し、HANSデバイスへ自然に収まるよう設計されている。ヘルメット後端とHANSが必要以上に干渉しにくく、衝撃や振動が加わった際にも接触部分から首へ負担が伝わりにくいという。
「今の四輪レースは、ヘルメット単体だけで身体を守るものではありません。HANSデバイスなど、ほかの安全装備とセットで考える時代です。SCHUBERTHはヘルメット単体の性能だけでなく、ほかのアイテムとの親和性まで考えられていると感じます」
顎ひもの取り付け位置にも工夫があり、締めた際に喉の一点へ負荷が集中しにくく、頭全体を下方向へ包み込むように保持する。細かな違いだが、長時間の走行における快適性や、正しい装着を続ける上で重要な要素となる。


まずは試着でSCHUBERTHの世界を体感してほしい
StarFiveでは、試着用のシェルと複数の内装パッドを用意し、一人ひとりに合わせたフィッティングを行っている。高崎氏が求める時間は、およそ30分だ。
「こんなに高いものを、サイズ表だけでギャンブルのように買う必要はありません。30分ほど時間を作っていただき、ぜひご来店いただきたいです。頭蓋骨、頬、目の高さという順番で見れば、必ずその人の顔に合わせ切る自信があります」
今後は神戸の店舗だけでなく、オートサロンをはじめとするイベントやサーキットでも試着機会を増やし、フィッティング結果を記録する“カルテ”のような仕組みも検討しているという。
「海外製だから合わないと思わず、まずは世界基準のヘルメットを一人でも多くの方に体感いただきたいです。イメージだけで選ぶのではなく、フィッティング性能も含めて一度かぶってみていただきたいです。買うか買わないかは、それからでいいんです。僕たちは、体感してもらえる店でありたいと思っています」
F1ドライバーがかぶっているから、高価だから、あるいは海外製だから――。そうしたイメージだけでは、本当に自分に合うヘルメットにはたどり着けない。参戦カテゴリーに必要な規格を確認し、自分の頭と顔に合うモデルを実際にかぶって選ぶ。SCHUBERTHの取材を通して見えてきたのは、ブランドの優劣ではなく、ヘルメットを“正しく選び、正しくかぶる”ことの重要性だった。
取材後記
正直、取材前はSCHUBERTHに対して「F1ドライバーが使用する高性能な海外製ヘルメット」というイメージが強く、モデルごとの違いや、ここまで細かなフィッティングができることまでは理解していなかった。しかし、実際に頬パッドを外した状態からシェルを選び、頬と頭頂部のパッドを順番に合わせてもらうと、その印象は大きく変わった。ヘルメットに頭を押し込むような窮屈さではなく、頭から顔全体をやさしく包み込みながら、必要な部分はしっかり保持されている。普段使用しているヘルメットとはサイズ表記も異なり、これまでのサイズだけを基準に選べないという高崎氏の言葉を、身をもって実感した。一般ユーザーでも、セミオーダーのような感覚で自分に合ったヘルメットを注文できる。そのフィッティング体験は筆者にとって初めてであり、これまでのヘルメット選びに対する認識が大きく変わった。
特に驚いたのがベンチレーションだ。ブロワーで風を送り込んでも、目に直接風が当たるのではなく、バイザーの内側を沿うように空気が流れていく。さらに、ハイコントラストバイザー越しに屋外を見ると、濡れた路面や木々の輪郭が想像以上にはっきりと見えた。カタログのスペックだけでは伝わりにくいが、かぶって、見て、風を感じることで初めて分かる違いが確かにあった。
今回の取材を通して感じたのは、ヘルメットは「どのメーカーが一番か」で決めるものではなく、自分が走るカテゴリーや使用環境、そして何より自分の頭と顔に合うものを選ぶべきだということだ。高崎氏の「買うか買わないかは、かぶってからでいい」という言葉は、単なる販売店のセールストークではない。長く使い続ける大切な安全装備だからこそ、時間をかけて納得できるものを選んでほしいという、レーシングギアの専門家としての率直な思いなのだと感じた。

取材協力
StarFive
SCHUBERTH Motorsport 公式サイト(英語)
https://www.schuberth.com/us/motorsport
モーターレーシングストア StarFive 公式サイト
https://www.star5.jp/

