5月30日・31日、鈴鹿サーキット南コースで開催されている「GPR KARTING SERIES 全日本カート選手権 第3戦・第4戦」の会場でレース関係者待望のアライヘルメットの新製品、四輪用ヘルメット「GPV-R RO 8859」、カート用ヘルメット「SKV-R RO 8878」の2モデルが発表された。RACING-DRIVER.JPはこの度、会場にてアライヘルメット国内営業部の仁佐瀬さんに話を聞いた。
今回発表されたのは、新たなFIA規格への対応を背景に登場した2モデルで、従来モデルからの単純なモデルチェンジではなく、規格変更に合わせて製品体系そのものが見直された形だ。前モデルの6系シリーズが発売されたのは2011年。約15年ぶりとなる新製品にはアライヘルメットによる並々ならぬ開発力と思いが結集されていた。

最大の特徴はセンターロック式シールド
新モデルの大きな特徴として挙げられるのが、シールドのセンターロック化だ。新しいFIA規格の制定時には、事故時や救助時の対応を考慮し、シールドロックをセンターに配置する案が検討されていたという。ドライバーが事故やアクシデントで意識を失った場合、頭部が右に傾くか左に傾くかは分からない。そのような状況で第三者がシールドを開けやすい位置はどこかを考えると、センターが合理的だという考え方だ。最終的に、センターロックは規格上の必須項目にはならなかったがアライヘルメットでは、安全性と救助時の扱いやすさを重視し、今回の新モデルでセンターロックを採用した。一方で、センターロック化には技術的な難しさもある。新しい規格では、落下テスト時にシールドが開いてはいけないという項目が追加されている。口元を打つ試験ではヘルメットがたわみやすく、センターにロックがあるとシールドが開きやすくなる。その条件をクリアしたうえでセンターロックを採用している点は、今回の新モデルにおける重要な進化といえる。


新規格で安全基準はさらに厳格化
新しいFIA規格では、従来よりも安全性に関する要求が厳しくなっている。落下テストでは、ヘルメットを落とす速度が従来よりも約1.2倍になり、さらに許容されるピークGも300Gから275Gへと引き下げられた。つまり、より厳しい条件のなかで衝撃吸収性能が求められるようになったということだ。そこに加えて、シールドが開いてはいけないという項目も追加されている。今回のGPV-R RO、SKV-R ROは、そうした新しい安全基準に対応するモデルとして開発された。
シールド位置を下げ、かぶったときの軽さも追求
アライヘルメット独自の進化として、シールド位置の変更も挙げられる。新モデルでは、GP-6と比較してシールド位置が25mm下げられている。海外向けに展開されていたGP-7と比較しても16mm低い位置となる。これにより、シールド固定部周辺の補強を減らしやすくなり、重量面でのメリットが生まれる。また、シールドや関連部品といった重量物の位置が下がることで、ヘルメット全体の重心も低くなる。製品重量そのものは従来モデルと大きく変わらないものの、かぶったときには軽く感じやすい。数値上の軽量化だけではなく、実際に装着したときのフィーリングを重視した改良といえる。

GPV-R ROはGP6-Sの後継にあたる新モデル
今回の四輪用モデル「GPV-R RO」は、従来のGP-6の後継ではなく、GP-6Sの後継という位置づけになる。仁佐瀬さんによると、従来はGP-6、GP-6S、GP-5W、カート用のSK-6といったモデルが存在していたが、新しい規格に対応するなかでモデルの整理が行われたという。特に大きなポイントとなるのが、FIA規格の変更だ。フォーミュラで使用されるヘルメットについては、FIA 8860-2018規格により、カーボン、もしくはカーボンと同等の硬度を持つ素材で構成されることが求められる。そのため、従来のようなFRP製ヘルメットは、F4を除くフォーミュラカテゴリーでは使用できない方向となる。そのため、今回のGPV-R ROは、国内競技における箱車、クローズドカー向けのFRPモデルという立ち位置になる。今後、GP-6の実質的な後継となるモデルについては、カーボン仕様として展開される予定だ。

四輪用とカート用の違いは主に2点
今回発表された四輪用とカート用のヘルメットは、外側のシェルやライナーは基本的に共通となっている。違いは大きく2点。ひとつはHANSアンカーに対応するM6ターミナルの有無。四輪用にはHANSアンカーを取り付けるための穴が設けられているが、カート用にはそれがない。もうひとつは内装素材だ。四輪用は難燃性素材を使用した内装となる一方、カート用は二輪用ヘルメットと同様、抗菌・消臭機能を備えた内装が採用されている。これは、カート用には難燃性内装の規定がないためだ。つまり、四輪用とカート用はまったく別物というより、競技規定に合わせて仕様を変えた兄弟モデルといえる。

視界や実戦での使い勝手も向上
今回の新モデルでは、開口部も従来より広げられている。GP-6系とGP-5系では、従来は視野の広さが大きな違いのひとつだったが、新モデルでは開口部を8mm拡大。フォーミュラドライバーからの「ステアリング上の情報を見やすくしたい」という要望も反映されている。これにより、従来のように開口部の広いモデル、狭いモデルを分けるのではなく、ひとつのモデルに統合する方向となった。さらに、内装側には視界を広げるための調整機構も設けられている。頬のあたりに視界を広げるための加工ができる構造があり、必要に応じて視野を確保しやすい仕様となっている。
加えて、マイクの配線を通すスペースや、給水ホースを通せる構造も備える。センタースチロール部分にはマジックテープ構造が採用され、給水ホースを任意の位置から出せるようになっている。耐久レースや長時間走行を想定した、細かな配慮が盛り込まれている。内装についても進化しており、これまで取り外し可能だった顎パッドに加え、頭頂部の内装も取り外し可能となった。洗浄やメンテナンス性の向上も、新モデルの特徴だ。
試着機会は代理店やレース会場で展開へ
四輪用ヘルメットは二輪用と異なり、一般量販店で広く販売される商流ではない。そのため、アライヘルメットが直接各地へ出向いて試着イベントを行うというより、取扱代理店や問屋を通じて展開される形になる。カート会場では、コジマブレインファクトリーが各サイズを用意し、実際にかぶれる機会を設ける予定。また、SPKではスーパーフォーミュラなどの会場で展示を行う予定だという。購入については、6月1日以降に代理店で受注が可能となり、初回出荷は8月末を予定している。販売店としては、カートショップや四輪系ショップが中心になる見込みだ。代理店がネットショップへ展開している場合は、楽天などのECサイトでも購入できる可能性がある。

カート界からはジュニア向けモデルへの期待も
カート用のSKV-R ROについて、会場での反応は良好だったという。一方で、カートカテゴリーはジュニアドライバーも多く、現場からはジュニア用モデルの新型を望む声も多かった。アライヘルメットでは、ジュニアカート向けの軽量モデルも開発中とのこと。新モデルと同様のセンターロック機構を持つ軽量モデルとして、今後順次リリースされる予定だ。

国内唯一の四輪ヘルメット製造メーカーとして
近年は、ベル、シューベルト、スティーロなど、海外メーカーの四輪・カート用ヘルメットも国内で存在感を高めている。そのなかでアライヘルメットは、国内唯一の四輪ヘルメット製造メーカーとして、日本のユーザーに安心して使ってもらえる製品づくりを続けていく考えだ。仁佐瀬さんは、アライヘルメットの強みについて「安全性へのこだわり」を挙げる。決して最軽量を前面に押し出すメーカーではないが、ヘルメットとして最も重要な安全性能を追求している点が、アライらしさだという。実際に、アライユーザーのドライバーからも「アライヘルメットから得られる安心感は大きい」という声があるという。製造方法や安全性へのこだわりが、ドライバーからの信頼につながっている。

9割以上が手作業。国内生産へのこだわり
アライヘルメットは、埼玉県を拠点とするメーカーだ。工場も埼玉・大宮周辺を中心に、一部は群馬県にも置かれている。製造工程の多くは今も手作業で行われている。機械が入るのは、シェルのカットなど人の手で行うと危険を伴う一部の工程に限られ、全体の9割ほどは手作業だという。そのため、生産数には限りがある。販売目標を掲げて大量に売るというより、違いを理解してくれるユーザーに、こだわって作った製品を届けたいというのがアライヘルメットの考え方だ。人件費や材料費、光熱費が上昇するなかでも、国内生産を守りながら、安全性を第一にした製品づくりを続けている。

今後は四輪用カーボンモデルも展開へ
フォーミュラやスーパーGTなどでは、カーボンヘルメットの需要が高い。今回発表されたGPV-R ROはFRPモデルだが、今後は四輪用カーボンモデルも展開される予定だ。カート専用のカーボンモデルについては、現時点では四輪用カーボンモデルをカートでも使用してもらう形が基本となる見込み。アライヘルメットは二輪用を含めた幅広い製品を手がけるメーカーであり、生産規模の面からも、まずは四輪用カーボンモデルを優先して展開していく考えだ。海外メーカーのカーボンモデルについては、軽さやラインナップの豊富さに優れる部分もあるとしながらも、アライとしては安全性を保ちながら、どこまで軽く、そしてユーザーが手に取りやすい価格にできるかを追求していく。
ユーザーの皆様へ一言
最後に、仁佐瀬さんからユーザーの皆さんに向けメッセージをいただいた。
「いろいろなヘルメットメーカーさんがある中で、国内唯一の四輪ヘルメット製造メーカーとして、日本人の方が安心して日本のメーカーのヘルメットを被っていただけるようにという思いがあります。山本尚貴選手からも「アライヘルメットだからこそ得られる安心感は絶大なものだと」昨日コメントをいただいたのですが、メーカーとしても安全性で世界一になる、安全なヘルメットでナンバーワンになるというところを第一にと考えております。かぶり心地と他にはない安全性能を提供していきたいと思っていますので、まずはぜひ多くの方に被ってみていただきたいです」

編集部員による試着の感想
編集部も試着をさせていただいたところ、前モデルGP-6系と比較すると重さは数gの違いではあるものの、構造上の重心を変更したことにより軽さを感じた。またGP-6系では特にフォーミュラでの乗車時にバイザーステッカーを貼ると視界が狭くなる印象があったが、GPV-Rでは開口部が8mm広がったことにより、視界が広がり視認性が大きく改善した印象をもった。また頬の感覚のホールド感上がり被り心地の向上に加え、口元の形状が変わったことにより呼吸がとてもしやすい。国内製造の老舗メーカーであることから日本人にフィットする被り心地を実現し、安全性も更に向上したおすすめのアイテムだ。また頭の形状に合わせて内装のスポンジをちぎって調整できるようになっている点や無線の配線を考慮したくぼみができている点、口部分は飲み物を飲むためのストロー穴が追加されるなども長年ドライバーとのテストやヒアリングを通し製品を仕上げてきた印象だ。



価格は、四輪用のGPV-R ROが98,000円+税、カート用のSKV-R ROが67,000円+税となる。
新しいFIA規格への対応、安全性を高めるためのセンターロックシールド、視界や給水・通信系への配慮、そして国内生産と手作業へのこだわり。
GPV-R ROとSKV-R ROは、単なる新型ヘルメットではなく、アライヘルメットがこれからの四輪・カートシーンに向けて提示する、新世代の安全基準といえるモデルだ。


