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RACING-DRIVER.JP編集部
2025.08.15

【独占取材】兄弟で切り拓く新時代!! HELM MOTORSPORTS平木兄弟の挑戦と若手ドライバーへの思いとは

皆さんはご存知だろうか。SUPER GT史上初の兄弟コンビとして最前線でレーサーとして活動しつつ、ジュニアフォーミュラからSUPER GTまで幅広く参戦する茨城発のレーシングチーム HELM MOTORSPORTS。チームを率いるのは平木湧也氏・玲次氏の二人でともに現役のレーシングドライバーでありながら、チームの運営、若手からジェントルマンまで所属ドライバーと共に奮闘しているレーシングチームである。今回、RACING-DRIVER.JPは、平木湧也氏・玲次氏の二人に独占インタビューを実施! レースとの出会いから兄弟のドライビングスタイルの違い、チームの特徴や若手ドライバーへのメッセージまで幅広くお話を伺いました。ぜひ最後までお読みください!

−レースとの出会い
平木湧也氏・玲次氏(以下 湧也氏・玲次氏 ):家族で遊びに行ったバイクショップでキッズカートスクール REON(レオン)のパンフレットを見たのがキッカケです。バイクショップの方に年齢的にも二人とも乗れるよ!と声を掛けていただき家族でキッズカートの体験に行きました。当時僕たちは4歳(湧也氏)で3歳(玲次氏)でしたがバイクショップでの出来事は正直覚えていないです(笑) 初めてカートに乗った時の記憶はあるかなあ〜 (僕は無いなあ 当時3歳の玲次氏) 何せ自転車に乗るより先にカートに乗ってます笑。両親が元々ホビーでカートをやっていたこともあり、両親の勧めもあってどんどんハマっていきました。キッズカートはトータルで5年くらいやりました。小学校高学年になると僕(湧也氏)はメカニックさんにメカニックを担当してもらい玲次は、お父さんがメカニックをするようになりました。1カテゴリーずつステップアップでシーズン毎に出場するレースでチャンピオンを目指して戦ってきました。当時、平日はカートの体力作りや将来の為に放課後は、水泳や体操教室、英会話など他の習い事、週末はレースというのがルーティーンでしたね。

兄の平木湧也氏(写真提供 HELM MOTORSPORTS)

弟の平木玲次氏(写真提供 HELM MOTORSPORTS)

−レースキャリアのターニングポイント
湧也氏: 2010年に地方選手権FS-125クラスで東地域でシリーズチャンピオンを獲得した時がレースキャリアのターニングポイントになりました。年々レース活動に掛かる経費も増える中で、シーズン開幕前にチャンピオンを取れなかったらレースを辞めようと思って臨んだシーズンでした。
玲次氏:そういう意味では湧也が取れたらなら僕も取れるだろうと意気込んで、翌年僕も同じ地方選手権FS-125クラスで東地域でシリーズチャンピオンを獲得できたのは大きな自信になりました。常に1個上のカテゴリーに湧也が出ていたので背中を追い続けてきました。常に兄貴という比較対象が居たので常に負けじとお互い切磋琢磨出来たのは良かったです。
湧也氏:当時、俺より早く走れるっていう自信もあったよね?笑
玲次氏:まあまあまあ笑
インタビュアー:兄貴としては、当時弟からのプレッシャーはありましたか?
湧也氏:プレッシャーは無かったです。お互いに自分の方が速いと思っていたので笑
玲次氏:うん!そうだね笑

−自身のドライビングスタイルとマシンセットアップについて
湧也氏:カートの頃から自分は理論派であまり直感には頼らず、ロガーの情報なども参考に走行中は常に頭で考えながらドライブするタイプです。
玲次氏:昔から僕は感覚派。走っている時は無。
インタビュアー:兄弟で走っているからこそ、お互いに思わず「おい!笑」と突っ込みたくなるようなことはありますか?
湧也氏・玲次氏:あります。あります!笑 もうちょっと考えろよと思ったり、逆に考え過ぎで、もっと直感的にいけよと思うことはあります。でも何かあった時にもエンジニアさんも含め、冷静に話し合える関係にあるのでそれは強みだと思っています。
インタビュアー:お互いにアドバイスし合うことはありますか?
湧也氏:昔はなかったのですが、今はGTでコンビを組んでいるのでアドバイスはし合います。
玲次氏:そもそも車の走らせ方もドライビングスタイルが全く違うんですよ。
湧也氏:そうそう参考にならないよね笑
湧也氏:最近わかったことではあるのですが、カートの頃から僕はフロントタイヤで走るタイプでコーナーに対して深く突っ込むコーナー進入で稼ぐタイプ。玲次はリアタイヤを使うタイプでコーナーからの立ち上がりを重視するドライビングスタイル。全く逆なんです。今GTに上がってもそういう傾向かなあ。
玲次氏:ある程度セットアップの方向性は同じ方向にいくのですが、微妙な好みの違いはありますけどGTはマシンをシェアして乗らなければいけないのである程度妥協点を見つけてセットアップすることもあります。

SUPER GT 300クラスに参戦するHELM MOTORSPORTSの車両(写真提供 HELM MOTORSPORTS)

−HELM MOTORSPORTSの特徴 "自身の経験を活かしドライバー・親御さんにも寄り添う"チーム
湧也氏・玲次氏:メンバー・スタッフ、ドライバーが若いチームで構成されている点に加えて、フォーミュラだけツーリングカーだけでなく両カテゴリーもやっている点は大きな特徴だと思います。柔軟性があり、どんなことにも対応できる点も強みです。
湧也氏:メカニックさんの人材獲得という意味でもフォーミュラが好きな方、ツーリングカーが好きな方と分かれることもあるので両カテゴリーやっているということは人材の獲得という意味でも意義は大きいと思っています。普段の工場での勤務からレース当日まで基本的にフォーミュラ班とツーリングカー班で分かれて仕事をしています。
玲次氏:ウチは整備学校から卒業した新人の整備士(新卒)も継続的に年に1度は必ず採用しているのも特徴の一つです。
湧也氏・玲次氏:広報や事務スタッフ含め、レースが好きな方、レース業界で挑戦してみたいと思っている方にぜひご応募いただき、一緒にお仕事がしたいと思っています。
湧也氏:あとは他のチームと比較とすると僕たちマネジメント側(湧也氏・玲次氏)とドライバーの年齢が近いので、互いに話しやすく・ドライバーに対して何かアドバイスをする際も諭しやすい雰囲気にあるのは良さでもあると思っています。ドライバーと同様、親御さんもお子さんの進路やステップアップに向けて悩みも多いので、親御さんとも意見交換をしたり自分達のジュニア時代の経験をお伝えすることもあります。あとはドライバーと親御さんは近い距離感であり、一番の理解者である一方、中々素直にドライバーも親御さんの意見を受け入れることが難しいこともあるので、そういった時に僕たちからも親御さんの意見と一致する点については僕たちからもドライバーに同じことを伝えることもあります。とにかく、この先のレースキャリアにおいて苦労しないように自分たちも現役でもあるのでこれまでの経験は伝えられるだけ伝えたいと思っています。とにかくあらゆる局面で失敗をしないように、できるだけ失敗がないようにアドバイスをしようと思っています。ドライバーにとって、各カテゴリーへのステップアップにおいて初めて経験することが沢山あるので、僕たちの経験からレースは勿論、レース以外のことでも様々なパターンがあるよとケーススタディを沢山積めるような助言は積極的にするようにしています。ドライバーはもちろん、チームスタッフやメカニックにも常に今、何が出来るかを自分で考えて行動するよう自主性を持つことを大事にしていこうとは話しています。ただメカニックにはわからないことや困った時に自分自身の判断でミスが起きないように何か困ったことがあったらいつでも相談して欲しいと伝えています。自主性=自由ではないのでそういった意味で雰囲気作りや相談しやすい環境というのはこれからも大切にしたいと思っています。
レーシングチームというプロ集団でありながらも平木兄弟はいつも笑顔が絶えない。チームには"親しみやすいアットホームなチーム作り"を目指す平木兄弟の思いが溢れ出ている。(写真提供 HELM MOTORSPORTS)

−若手ドライバーに伝えていること・求めること
湧也氏:やる気はもちろん大事ですが、1番重視しているのは人間性の部分ですよね。近年ドライバーとしてのレベルは本当に高いレベルで拮抗していて、レース以外で大切にして欲しいのは人間性。加えてカートからフォーミュラにステップアップするとコストの部分が大きく変わってくるのでその部分はドライバーにもしっかりと伝えています。カートだと1日200周走れても、4輪カテゴリーだと1日30周程度の周回になってしまう。走行距離が減ってしまうので1周1周を大切にしなければいけないし、1日に出来る周回数が大幅に限られるので例えどこかのコーナーで失敗をしてもその周はアタックを諦めるのではなく、1周1周1つ1つのコーナーでトライすることを大切にして欲しいと伝えています。極端に言うと毎ラップ違うアプローチをしても良いし、コンディションの変化もある中で、毎ラップ、毎コーナー新しい発見もあると思うので常にトライし続けて欲しいと伝えています。

FIA-F4選手権には今年もチャンピオンシップクラスに2台、インディペンデントクラスに2台の合計4台体制で挑む他、F110CUPにも参戦中(写真提供 HELM MOTORSPORTS)

あとは、少しでも速くなろうというマインドを常に持って欲しいと思っています。ロガーをドライバーと一緒に見てコーチングする時は、ブレーキの踏力が抜けていたら踏力が足りないよねといったアドバイスや朝一は良かったけど夕方になると少しステアリング操作が雑になってラップタイムに影響しているいったことは客観的なアドバイスとして行ないます。ただ、ドライバーが何かをやらされているという感覚が芽生えてしまうと続かなくなってしまうので、僕らからドライバーに対して何かを強制するようなことはしないです。その代わりにライバルよりも速く走るにはどうしたら良いかを日頃から常に考えて欲しいと思っています。そういった考えがあれば、自分には脚力が不足しているからトレーニングをしよう、もう少しシミュレーターに乗ってみようという発想が芽生えて行動に移れるので、そういった時には様々機会を提供したりアドバイスをするようにしています。ドライバーには僕らのような所謂チーム側からなんでも与えられると思って欲しくないので、細かなことでも質問をする姿勢や自分から機会やチャンスを取りに行く姿勢は大事にして欲しいと思っています。プロになった時は自分で考えて決断をするシーンが走行中だけでなく、あらゆるシーンで必要になるので、とにかく失敗しても良いのでトライすること、何より自主性が大事だと思います。
例えレースで上手くいかなかったとしても見てくれている人は必ずいます。そう言った方が時にはチャンスを与えてくれることもあるのでとにかく腐らずに自分のベストを追い続けて、長くこの業界で生き残れるように頑張って欲しいと思っています。僕自身もこういった思いでやっています。見ている人はいるよ。そう伝えたいです

レーススタート前には所属ドライバーへの激励を欠かさない両選手。所属ドライバーにとってもモチベーションが最大限に上がる瞬間のようだ

−今後に向けた意気込み
湧也氏:ドライバーとしては、やはりドライバーがチームの空気感と流れを作る重要なポジションなのでドライバーとしてメカニックやスタッフには感じたことをしっかりと伝えていき、チームを引っ張っていきたい。その先にSUPER GTではポイント獲得、表彰台獲得を目指したいと思っています。一方、FIA-F4、F110CUPについては自分の経験をどれだけチームやドライバーに落とし込めるかを追求して、チームの規模や予算などが違う中でも他にチームに負けないよう上位で争っていきたいです。僕自身、四輪にステップアップしたての頃は何もわからず、相談したいことも誰に聞いたら良いかわからず、何が正解かもわからなかったという経験をしました。なのでカートからのステップアップを考えているドライバーの方には僕たちの経験値をドライバー本人はもちろん、親御さんにも伝えていきたいですし、ヘルムに聞けば親身になってくれるという場所にしたいなと思っています。レースはどうしても敷居が高く見られてしまう側面もあるので、良い意味で親近感や親しみやすい環境をチームの雰囲気としてはこれからも大事にしていきたいですし、ぜひ声援を送っていただけると嬉しいです。

インタビュー中、印象的だったのは平木兄弟の仲の良さと互いに意見をストレートにぶつける中でも互いへのリスペクトが非常に高いこと。そして何より彼らの笑顔の多さとチーム全体の雰囲気の良さがとても印象的であった。所属ドライバーやメカニックとの会話は当然真剣なシーンが多いものだが、互いへのリスペクトと笑顔が印象的で平木兄弟が目指すアットホームな雰囲気が筆者にもひしひしと伝わってきた。
レーシングドライバーを目指しステップアップを目指すジュニアドライバー、そして次なるジェントルマンドライバーのHELM MOTORSPORTSでの熱い走りが楽しみだ。

平木湧也選手 RACING-DRIVER.JP 公式ページ
https://www.racing-driver.jp/yuya-hiraki/

平木玲次選手 RACING-DRIVER.JP 公式ページ
https://www.racing-driver.jp/reiji-hiraki/

HELM MOTORSPORTS RACING-DRIVER.JP 公式ページ
https://www.racing-driver.jp/helm-motor-sports/

HELM MOTORSPORTS公式ホームページ
https://helm-ms.co.jp/