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RACING-DRIVER.JP編集部
2025.06.24

【会見取材記】「カートから世界へ」日本カート協会(JKA)が目指すモータースポーツの未来

この度、レーシングカート競技の普及と振興を通じて、健全なモータースポーツ文化の未来への継承を目指す一般社団法人日本カート協会(JKA)が発足。発足に際して、2025年6月24日、東京お台場シティーサーキット東京ベイにて報道関係者を対象とした設立発表会見が開催され、協会設立の趣旨や想い、組織体制などが発表された。

本団体はその名の通り、公共性を保つ非営利型法人の一般社団法人として設立。全国カートコース運営団体の日本カートランド協会、全国SLカート運営団体 SLカートスポーツ機構(SLO)、全日本カート選手権運営団体であるGPRシリーズの3団体から社員参画という形で組織構成され、理事にはJAFカート部会 部会長の谷本 勲氏、SLカートスポーツ機構代表理事の夏苅隆裕氏、GPR代表の松浦佑亮氏、日本カートランド協会の茂田和也氏が参画。代表理事には現役スーパーGTドライバーの山本尚貴氏が就任した。また協賛や各種支援企業として、日産自動車、本田技研工業、トヨタ自動車、ブリヂストン、横浜ゴム、住友ゴム工業、またSUPER GTシリーズ、SUPER FORMULA シリーズ、スーパー耐久シリーズも各種事業連携・協賛企業としてラインナップされている。

本組織が発足された経緯については、1995年をピークとしたカートライセンス発給数の減少及びジュニアドライバーの減少を端にしたカート人口の減少を受けて、レーシングカートの普及・人材育成・スポーツとしての社会的認知獲得を目指し、業界団体関係者の課題意識が一致し、カート業界に長く関わる業界関係者・団体によって組織された模様だ。

会見では、カート人口の減少の要因として昨今の為替等による物価高も含めた参戦コストの高騰やカートとの接触機会の減少、他の競技との選択競争、社会的認知度の低さなどを挙げ、競技人口の拡大・普及、そしてジュニアドライバーの育成に焦点が置かれた。

代表理事として選手された山本尚貴氏の選出については、6歳からレーシングカートを始めたカート出身者であり現役のレーシングドライバーであることそして、カテゴリーやメーカーの垣根を変えてモータースポーツやカートに対して情熱をもって推進することが期待されてのことだと谷本氏より語られた。

山本尚貴氏のレーシングカートでの活躍が集約されたスライド 出典) 一般社団法人 日本カート協会会見配布資料より

会見の前半パートでカート業界の現状や課題を説明した谷本 勲氏(JAFカート部会 部会長)

JKAの活動のキーワードとしては、「発掘・普及」が挙げられ、具体的には年1回以上の有望選手の発掘合宿、レース現場でのスカウティング活動、各地域での育成ミニ合宿などが予定されているとのこと。そして「普及」の面では「カートをより身近に、誰もが楽しめるスポーツへ」をコンセプトに地域連携による参加機会の創出や教育機関との連携による交通安全指導の側面でのカートとの接触機会の創出などを計画中とのことであった。また、全国のカート場やカートショップなどとも連携し、誰もがカートに触れられる環境整備(地域イベント協賛、カート場での体験会、教育機関との連携による体験会)、初心者向け継続プログラムの整備(ミニスクールの全国展開、技術や安全・ルールを段階的に学べる内容とすること、情報発信の強化(ポータルサイトやSNSでの情報発信、保護者向けコンテンツ、動画制作)が挙げられた。

また育成について、現在はトヨタおよびホンダがメーカーとして若手ドライバーのステップアップ支援を行なっているが、メーカーとの育成とは共存する形で特に10代前半のジュニアドライバーにフォーカスして、レースでの活躍のための走行技術はもちろん、フィジカル・メンタル・語学・栄養・自身の想いや考えを適切に言葉にする言語化力・自己表現・競技以外の活動機会を通した社会理解と視野の拡大の観点で専門スタッフがサポートしていく模様。また今後は「オールジャパン」として発掘合宿やスカウティングを通じて見出された有望選手の中から、特に優れた選手を選抜した日本代表チームとしての国際大会出場なども目指すとのこと。

会見で代表理事として登壇した山本尚貴氏。自身のカートでの経験や昨今のカート業界を冷静に分析し、業界発展の観点で力強く協会の活動や想いを語った。

会見終了に山本尚貴“チェアマン”に個別に取材のお時間を頂戴し、ステップアップを目指し活動するジュニアドライバーへの日本カート協会チェアマンとしてのメッセージを伺ったところ「レースで速く走ることはもちろん、人間力や語学・考え方色々なところを評価しながら我々のプログラムについてきてくれる人に対して才能をしっかりと見出していきたい」と意気込みを語りました。

また現在活躍するジュニアドライバーに対して感じていることそしてプロへのステップアップを目指す中で求めていることについては、「若い選手で今足りないなと感じることの一つとして想像力や工夫をすること。言われたことはかなりできている印象があるが、レースも含めイレギュラーなことや自分で考えてアクションを起こさなければならないという時に少し弱さが出たりするのかなと感じている。決してこれはカート業界だけでなく、学校教育から始まる部分もあるのではないかと思う。昔は危ないことでも経験して覚えるようなことも良しとされたこともあったが、今は手前手前でリスクを未然に抑えるようなことが結構多いのではないかと思う。速く走るための教育という意味では、大人の方がしっかりサポート出来ているが、最後は自分で判断して自分で立ち向かっていかなければならないというシーンは将来必ず出てくる。そういったことをカート協会を通じて早めに教えてあげること、理解してもらうことも大事なのではないかと思っている。夢の実現に向け近道は提示できるが、その道を走るのは本人であり、しっかりと考える能力というのは養ってもらいたいし、自分で思考を凝らしてやらないといけないというのは合わせて伝えたい。近道は提示できても最後は自分だよというのは勘違いしないでほしい」と熱いメッセージを残してくださりました。

アメリカ市場、とりわけNetflixを端にした世界的なF1ブーム、そして国内トップカテゴリーでも年々来場者が増えている一方、昨今競技人口の減少が見られているレーシングカート業界。この度の日本カート協会の立ち上げによりカートの競技人口の増加、その先の日本を代表する未来のスターの誕生に向け、私共RACING-DRIVER.JPも微力ながらドライバーやチーム、現場の皆様の想いを日々伝えていけるよう活動を強化して参りたいと思います。

一般社団法人 日本カート協会 オフィシャルサイト
https://japankarting.or.jp/