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RACING-DRIVER.JP編集部
2025.08.07

HAAS F1 TEAM 小松代表 TGR MS 加地部長が語る日本のモータースポーツ文化の啓蒙と若手ドライバーへのメッセージ

2025年8月5日(水) 富士スピードウェイにてMoneyGram HAAS F1 TEAMによるTPC(Testing of Previous Cars)が始まった。MoneyGram HAAS F1 TEAMは、昨年TOYOTA GAZOO RACINGとの車両開発分野などにおいて協力関係を提携。HAAS F1のチーム代表は小松礼雄氏、そしてリザーブドライバーは平川亮選手と日本とは大変密接な関係に発展しつつあるF1チームの1つである。TPCが始まった初日には小松代表とTGRモータースポーツ部 加地雅哉部長がメディア向けの取材に応じ、日本におけるモータースポーツ人気の現状と今後の展望や思いを語った。

−日本におけるモータースポーツの人気と小松代表の思い "日本の皆さんにF1をもっと身近に感じて欲しい"
小松礼雄代表(以下 小松代表):「野球などに比べると日本でのF1の人気はない。大谷翔平選手は愛犬の記事も雑誌に掲載されるがF1の記事は普段目にしない。鈴鹿でのF1日本グランプリを観戦するといっても決してチケット代は安くはないし、チケットを取るのも大変だし、ホテルも高く、敷居が高くなってしまっている。そこでHAAS F1 TEAMとしてはトヨタとの提携関係があり、日本でF1を走らせられるならトヨタのホームコースである富士スピードウェイでテストという形であればチケットも安く設定できるので敷居を下げられるし、ちょっとF1に興味があるのだけどもという方にもぜひ来て欲しいし、とにかくF1に触れて欲しいし、F1を身近に感じて欲しいという思いが日本でのTPC開催に至った。今回はランチタイムにオートグラフセッションやドライバーが参加するトークショーも開催し、ガレージの隣を開放してピットレーンからマシンを見れるようにしたが通常のF1のグランプリーウィークではそういったことはできない。ぜひF1をもっと皆さんに身近に感じて欲しいと思っている。

MoneyGram HAAS F1 TEAM代表 小松礼雄氏

−初日 約3,000人のファンの来場に関する所感
加地雅哉 代表(以下 加地代表):「朝からゲートにはお客様の渋滞もあり、とにかくお客様の多さにびっくりしたし沢山の方にご来場いただけて大変ありがたいと感じた。小松さんとこのTPCの開催にあたっては当初からどなたでも入場できるしようと話していた。実際にTPCを富士で実施してもっと開催すればもっと多くの方に来ていただけるし、ポテンシャルがあることもわかり良い取り組みだったと思う。もしまた開催が実現できたらもっと準備をして更に多くの方にご来場いただきたい。」

小松代表:「ヨーロッパではF1のテストは頻繁に行われているが日本は鈴鹿でグランプリがあり、少し東京で数周のデモランがある程度。それ以外日本でF1を観れる機会がない。日本でF1を観れる機会をもっと作らないとファンは増えない。F1を知らないけど興味を持っている方々をしっかりと引き込まないといけない。そういった方に近くでF1が観れるなら行ってみようと行動に移していただけるような構造を今後作っていきたい。そういった意味でも今回のTPCは滅多にない貴重な機会になったと思う。とにかく今回は皆さんにご覧いただけるようオープンな形でテストを実施し、ファンの方との交流の機会も作ろうと思った。」

−HAAS F1×トヨタ今後のドライバー育成について
加地代表:「今回初めて坪井選手をF1に乗せるが今後の彼のレースキャリアを我々としてもどのように作っていけるか彼がパフォーマンスを発揮できるかしっかりと見極めたい。チームとのコミュニケーションもしっかりできるか、チームと高め合っていけるか今回のテストの内容・結果から見定めて、今後のステップをどうするかを小松さん含めて検討していきたい。この先、ハースとトヨタでどのようにドライバーを育成していくかを話をしているところ。ドライバーにパフォーマンスがあり、車が作れて、チームとコミュニケーションが取れてしっかりとレースができればどのようなキャリアを歩んできたか、ステップを歩んできたか、そしてドライバーの年齢も問題ではない。F2にドライバーが参戦することも大きな経験になるしアドバンテージもあるが平川選手のようにF3やF2を経由せずに今のF1のリザーブドライバーに行き着くという方法もある。しっかりと与えられた環境でパフォーマンスを発揮することが大事なので、例えばスーパーフォーミュラチャンピオンの坪井選手がF2に挑戦する必要があるかは彼のパフォーマンス次第でもある。なので僕らとしてはドライバーに対して色々な選択肢があっても良いと思っている。国内で頑張っているドライバーがF2を経由することもあれば別のルートを歩む可能性もある。大事なのは経験値を積むこととパフォーマンスを発揮すること。小松さんそしてHAAS F1とドライバーの受け皿を作っていくことも非常に大切。僕らのパートナーシップも始まったばかりなので、選手それぞれにあった道をプロデュースできるような枠組みを今後しっかりと作っていきたい。」

TGRモータースポーツ部 加地雅哉部長

−プロフェッショナルドライバーを目指す若手ドライバーに小松代表が求めるもの・メッセージ
小松代表:「好きなことに対して全身全霊で頑張って欲しい。どのようなカテゴリーでも年齢に関係なくとにかく真剣にやることが大事。自分のやりたいことを実現するには何をすればいいのかを徹底的に考える。与えられた環境を待つのではなく自分でチャンスを取りにいくが凄く必要。僕の息子もカートをやっているが、学校教育だけだと接する大人は先生だけだが、カートをやっているとチームマネージャーもいるし、メカニックもいるし、そこに自分の親も居て沢山の大人と接しなければいけない。そういった環境は中々ない。同じチームの中でも色々な年齢のドライバーが居るので違う歳の子どもともコミュニケーションが必要。僕が人生において重要だと思っているのは人生って落胆することの方が多い。失敗することの方が多い。子どもにとっても理不尽だなと感じることもきっとあると思う。カートにおいても、トランスポンダーが脱落して失格処分を受けて下位からスタートするといった自分は全力でやっていても自分のコントロール下以外のことで理不尽な目に遭うこともあると思う。そういった時に腐るのではなく失望した時、理不尽なことが起きた時にどう対処するかが重要。子どもの頃からそういった経験を積むという意味でカートは色々な面で人生教育になる。将来レーサーになる・ならないに関係なく幼少期のレース経験は凄く良い"学校教育"なのではないかと思う。何事もいい加減にやっていたら得るものは何もない。何事も全身全霊で一生懸命やっていれば結果がどうであれ絶対その後の人生に繋がると思う。

小松代表と加地代表のインタビューを振り返ると、とにかくF1をもっともっと多くの方に知っていただく機会を創出し、身近な存在として認知しファンになっていただきたい。そういった熱意溢れる言葉が多く語られた印象だ。トークショーでも小松代表は「F1をもっと多くの方に広く身近に感じて欲しい。そのような機会をこれからも作りたい。」と強調していた。
平日とはいえTPC初日には、約3,000人のファンが訪れたサーキットは熱気に包まれていたが映画F1の国内でのヒットそして、富士スピードウェイという都心からのアクセスの良好さと大人1,200円という入場料も来場数に大きく起因したといっても過言ではないだろう。

ドライバー育成という意味でも一層HAAS F1とトヨタの提携が密接になる中で、小松代表からも幼少期は学校教育以外のカートでのレース活動における成功や挫折、周囲の人間環境から多くのことを学び続け、全身全霊で挑むことの大切さが語られた。

次なる日の丸を背負ったドライバーの日本でのF1カードライブ実現の日もそう遠くないのかもしれない。