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RACING-DRIVER.JP編集部
2025.05.17

Formula e ジェフCEOが語る。ジュニアカテゴリーへの熱い想いと未来のドライバーたちへのエール

2025年5月16日、世界のトップフォーミュラカテゴリーの1つであるABB FORMULA e WORLD CHAMPIONSHIP TOKYO E-PRIXが開幕した。世界10都市、年間で全16戦が開催されるFormule e。時速60マイル(約96km)までの加速は約1.82秒と現代のF1マシンよりも30%近く高い加速性能を誇るモンスターマシン。全22台共通のマシンでレースが行なわれ、コンパクトなマシンと電気自動車という特性を活かし世界中の公道やサーキットでレースが行なわれて多くのファンが熱狂している。

(Photo by Simon Galloway/LAT Images for Formula E)

RACING-DRIVER.JPの掲載ドライバーのように今日、日本にはレーシングカートからジュニア・ミドルフォーミュラのフィールドで凌ぎを削る男性・女性ドライバーが数多く存在するが、その中でも世界の舞台で活躍することを夢見るドライバーも多い。そんなジュニアカテゴリーから世界を代表するレースの一つであるFormula eへのステップアップにあたってのプロセスや現状についてジェフCEOはどのように感じているのか。我々が質問を切り出すとジェフCEOは表情を変え、ペンとノートを片手に与えられた25分間のインタビュー時間の大半を費やし、熱心にこう語ってくれました。
「グローバルモータースポーツにはキャリアのスタートとしてまずレーシングカート、そしてF4、F3、F2、F1そしてFormula eとステップアップする。殆どのドライバーがF1を目指しているのが実態である。レースを戦う為にドライバーが必要な年間のコストに目を向けると、概算でレーシングカートで約15万ドル、F4で約50万ドル、F3で約125万ドル、F2は250万ドル。だがFormula eは0円、つまりドライバーがFormula eへ参戦するにあたりコストは必要としない。つまりFormula eのドライバーは、レースをすることでサラリーを受け取っている。(※あくまでジェフCEOによるグローバルにおけるレース参戦に対する概算コストの試算値です。) F1ドライバーのマックス・フェルスタッペンのようなドライバーはもちろん参戦コストは一切発生していないが、F1では一部のドライバーは年間2000万ドル近く資金の持ち込みが必要な場合もある。従って、もし今日の世界選手権のトップカテゴリーにステップアップするには、お金がなければならない。我々Formula eが今取り組んでいることは、まずはレーシングカートなどのジュニアカテゴリーなどをコストが発生しない形でドライバーが活動できるような仕組みを作ろうとしている。そういった仕組みが構築でき、ジュニアカテゴリーで才能を魅せたドライバーが居たとしたら、Formula eにステップアップできるように彼ら・彼女らを支援していきたいと思っている。」と語った。

(Photo by Alastair Staley/LAT Images)

では、なぜFormula eとしてレーシングカートのカテゴリーのドライバーに焦点を当てようとしているのか「それは今日、世界のトップカテゴリーで活躍する一流の選手たちが皆、レーシングカート出身であるという疑いの余地がない事実があるからだ。したがって今レーシングカートで凌ぎを削っているドライバー達は既にドライバーとして素晴らしい存在なのです。」と語り、レーシングドライバーのキャリア形成にあたってのレーシングカートの重要さを語りました。

現代はシミュレーターの発達が進むが、そのシミュレータートレーニングがもたらす効果についてもジェフCEO自ら触れた。「10年前シムレーシングの文化はほぼ皆無でした。今、シムレーシングは発達して、シムレースにおいて才能を証明できればスポンサーを獲得できるようになった。ただシムレーシングにも問題があり、先日我々は、マイアミE-PRIXでシムセッションを実施し、インフルエンサーやセレブリティが実際にフォーミュラeをドライブした。シムレーシングにおけるインフルエンサーやセレブリティとフォーミュラeドライバーのタイム差は1ラップあたり僅か2秒ほどの差であった。だが実際にインフルエンサー達にフォーミュラeのレースカーをサーキットで走ってもらうと1周あたりフォーミュラeドライバーと10秒のラップタイム差があった。なぜそこまでのタイム差が発生したのか、シミュレーターには実際のコンクリートウォールもなくクラッシュの心配はまるでないからある種ゲーム感覚でやっている側面もあるからだ。従ってシミュレーターは才能を発掘する良いものではあるものではあるがまだ途上とも言える。シミュレーターの技術は年々向上しているので我々としても注視していかなければならない。」と答えました。

さらにジェフCEOはレーシングドライバーのステップアップにおいて、スポンサーの獲得の重要さについて語りました。
「今日、レーシングカートで好成績を掴んでいてさらにステップアップを志すならスポンサーを獲得する必要がある。ひとつ良いストーリーを披露します。日産Formula eドライバーのオリバー・ローランド。彼は決して裕福な家庭で育ったわけではないですが、彼がプロのレーシングドライバーとしてサラリーを得た際に、家庭環境が裕福でないジュニアドライバーの為にレーシングカートのアカデミーを自ら開設した。」

日産チームのオリバー・ローランドは現在フォーミュラeでチャンピオンシップをリードしている。(Photo by Simon Galloway/LAT Images for Formula E)

そのオリバー・ローランドが率いるアカデミーのドライバーの出身の1人が「テイラー・バーナード」だと言う。
「彼はレーシングカート、F4、F3、F2とステップして今はマクラーレンでレギュラードライバーとして参戦している。こういったことが現実に起きているのです。」とジェフCEOは熱心に答えました。

ルーキーシーズンにして表彰台を既に3度獲得し活躍が注目されている19歳のテイラー・バーナード(Photo by Alastair Staley/LAT Images)

またジェフCEOはモータースポーツにおける女性活躍についても触れました。「モータースポーツライセンスの取得者の内97%が男性なのです。女性は僅か3%。我々フォーミュラeとしては女性がもっと活躍できる機会を創出しなければならないと思っている。なので女性限定のルーキーテストをスペインのマドリードで実施し、日本からは小山美姫選手も参加した。
昨年11月スペイン マドリードで行われた合同テストに参加した小山美姫選手(Photo by Sam Bagnall/LAT Images)

F1にも女性限定レースF1アカデミーが発足し、年間の幾つかのF1のレースウィークエンドで同時開催されているが、今後フォーミュラeとして女性活躍に向けた計画については、「女性の為のルーキーテストの開催をこれからも継続し、我々のビジョンとしてはF1アカデミーとは異なり女性の為にマシンのパワーを落とすことなく、男性と同じ舞台で同じ車両で競って欲しいと思っている。なので我々としてはフォーミュラe車両を用いて女性ドライバーがテストを重ね、活躍できる機会を創出していきたい。」

日本でステップアップを目指し活動するドライバー達へのメッセージをお願いすると「まず何があっても絶対に諦めないこと。そして出来るだけ早く、自身の才能を証明できる機会を掴む・みつけることが重要だ。若手ドライバーにとって才能を示す簡単な方法の一つとしてシミュレーターやレーシングカートのレースがある。それらのレースで自分に才能があること、何が出来るかをトップチームに対して証明すること。もし好結果を掴むことができたらスポンサーを掴むことができ、次の扉が開く。そしてGTカーでもツーリングカーレースなどでのチャンスが訪れる。とにかくマシンをドライブし才能を証明し続けて欲しい」と語りました。

取材終了後、ジェフCEOにRACING-DRIVER.JPの取り組みについて直接説明の機会をいただきお話をしたところ興味を示され、中でもレーシングカートの選手がレースで勝利したガッツポーズの写真には釘付けになりジェフCEO担当のFormula eスタッフにもその場でシェアするなど喜んでいただけた様子でした。またKYOJO CUPを始めとした女性レーサーのページについてもお見せすると彼女たちは今週来ないのかい?ぜひこのTOKYO-E PRIXで会いたかったとこちらも興奮気味に語り、日本における女性・そして若手レーサーにも大変関心を示されていたのが印象的でした。

RACING-DRIVER.JPのドライバーそしてサイトをご覧になられているファンの皆様へビデオメッセージを頂戴しましたのでぜひご覧ください。